ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明 CREST 「脳と学習」領域 大隅プロジェクト
吉川研究室
・理化学研究所・脳科学研究センター・分子精神科学研究チーム 吉川武男

作成中内因性精神病あるいは機能性精神病と呼ばれる統合失調症や気分障害は、比較的発症率も高く慢性の経過をたどります。一旦発症すると、患者さんのクオリティーオブライフは一生涯影響を受けることになります。これは未だ精神疾患の原因や病気を完治させる方法が知られていないからです。患者さんの負わなければならない苦悩や社会としての損失には莫大なものがあり、早急に疾患のメカニズムを解明し、根本的な治療法や予防法を確立することが求められています。CREST研究大隅班では、脳の発生・発達に関係する分子に注目し、そのような分子をコードする遺伝子の「個人差」が、成人になったときの精神機能にどのように関係するのかを中心に調べていきます。ここで遺伝子の「個人差」について簡単に説明しますと、ひとの個性や体質、行動パターンなど、いわゆる「個人差」は、母体内にいるときから始まって、その後のいろいろな養育環境によって形成されると考えられていますが、それと同時にそのひとが持つゲノム(本体はDNAという化学物質からなり、遺伝子の総体と考えてください)配列によっても影響を受けると考えられています。個人が違えば、ゲノム上で数百万箇所以上はDNAの配列に違いがあります。それらの違いの大部分は、SNP(スニップと呼ぶ)という一塩基置換からなります。ゲノムDNAはA, G, C, Tという4種類の塩基が約30億個鎖状に並んだものですが、ある人はある箇所がAであるのに、別のひとはその箇所がGからできているとう具合です。このようなDNA配列上の違いを「多型」と呼びます。遺伝子の多型に焦点を当てた研究から、少しでも社会に還元・貢献できるものが生まれるよう願って努力していきたいと考えております。

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