ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明 CREST 「脳と学習」領域 大隅プロジェクト
大隅研究室
・東北大学大学院医学系研究科・創生応用医学研究センター
形態形成解析分野
大隅典子

私たちの研究室では胎生期の脳の発生と生後の脳の発達について、様々なアプローチにより齧歯類(ラット・マウス)を用いて研究を行っています。例えば、およそ数百億といわれる神経細胞から成る脳が形作られるときに、どのような遺伝子群が働いているか、個々の細胞は脳の中でどんな風に振る舞うか、もしある遺伝子の機能が損なわれたら脳の形成や動物の行動にどのような異常が生じるか、などの問題に取り組んでいます。

大隅研究室figureとくに注目している遺伝子の名前はPax6(パックスシックス)です。この遺伝子は、未分化な神経の前駆細胞が分化する(つまり幼若な、まだ神経細胞になっていない細胞が変化して、機能を発揮できる神経細胞になる)過程で働いています。神経前駆細胞が分化する際には、細胞の分裂が伴います。つまり、神経細胞の分化の過程では、細胞の増殖と分化が同時に起きているのです。この過程で、Pax6は、未分化な神経前駆細胞の数を調節しながら、徐々に分化させるように監視するような働きを持っているのです。このことから、Pax6は神経細胞の分化における親分遺伝子(マスターコントロール遺伝子)とも呼ばれています。

神経細胞の産生(ニューロン新生)は胎生期に爆発的に生じます。ところが実は、脳の一部(例えば記憶や学習に関係すると言われる海馬など)では、徐々に減りながらではありますが、生後も神経細胞の産生が続くということが分かってきました。 Pax6はこのような生後の神経細胞の産生にも重要な働きをしています。CRESTのプロジェクトでは、Pax6という親分遺伝子の号令のもとに、どのような子分遺伝子たちが働いているか、親分遺伝子の働きが悪くなってしまったときに、どんな異常が脳の発生発達や動物の行動に生じるかについて、研究を展開していきます。

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