ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明 CREST 「脳と学習」領域 大隅プロジェクト
井ノ口研究室
・三菱化学生命科学研究所(MITILS)・記憶形成・精神疾患研究グループ 井ノ口馨

脳機能の研究は21世紀に残された科学研究の最後のフロンティアの一つです。ここ10年余の研究の進展により、学習・記憶などの脳の高次機能を分子の言葉で理解することが現実のものとなってきました。脳機能の分子レベルでの理解は「人間とは何か、自分は何者であるのか」と云う哲学的命題に自然科学の視点から答えようとする営みであると共に、老化に伴う脳機能の低下や老人性の痴呆、さらには様々な精神疾患の予防・治療への道を拓くものとして期待されています。

井ノ口研究グループでは、「記憶の機構」ならびに「精神疾患の発症機序」を分子レベルで明らかにすることを目標としています。「記憶」や「精神疾患」という巨大な象を理解するためには、鼻や足や胴体だけを触って「記憶とはホースのようなものだ」「いや柱のようなものだ」「いやいや壁のようなものだ」と言っていても始まらないわけで、あらゆる方向からのアプローチが必要です。私たちは、「分子レベルでの理解」を合い言葉に、分子生物学・生化学から組織化学・電気生理学・行動科学まで幅広いアプローチを取ることによって理解を深めようとしています。

CRESTのプロジェクトでは、齧歯類をモデル動物として用いて、精神疾患の発症機序を分子レベルから個体レベルまでの幅広い解析により明らかにしようとしています。特に、生後脳の神経新生異常の観点から精神疾患発症におけるストレス脆弱性の分子機構を解き明かすことを目指しています。神経新生に関わりのある遺伝子の機能を改変したマウスやラットを作出し、それら動物のニューロンの構造・機能や行動異常を解析し、精神疾患様の行動異常の原因を探ります。

私たちの研究が、人間のより深い理解につながり、また、さまざまな脳機能障害や精神疾患の予防・治療法の開発につながることを願っています。

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