ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明 CREST 「脳と学習」領域 大隅プロジェクト

脳の世紀シンポジウム

2005年9月21日、東京の有楽町朝日ホールにおいて第13回「脳の世紀」シンポジウムが開催され、大隅典子は「心を生みだす遺伝子」という演題で講演を行いました。リンク: 「脳の世紀シンポジウム」 サイト


趣旨:
 私たちの感情や思考や意志などの心のはたらきは、体の中では脳という臓器によって担われています。そして脳は、胎生期の初期から多数の遺伝子が互いに作用することによって作り上げられ、出来上がった脳の中でも遺伝子は時々刻々と働いています。したがって、心を生みだすもとになっているのは遺伝子であると言うことができるのです。
 脳の中には1000億個のニューロンと、その10倍の数のグリア細胞が存在し、精密なネットワークを形成しています。たった1個の受精卵から出発して、60兆個の細胞から成る体が、そして脳ができる仕組みは、長い進化の過程で備わってきたものですが、まさに驚異的というしかありません。私たちの研究室では、どのようにして脳の細胞の元になる細胞(これを神経前駆細胞と呼びます)がたくさん分裂して数を増やし、ニューロンやグリアの細胞に変化する(これを分化と呼びます)かについて、そのときの細胞の振る舞いや遺伝子ネットワークを明らかにする研究に取り組んでいます。
 「遺伝子は(あるいはDNAは、ゲノムは)体の設計図である」という喩えが日常よく使われています。これは遺伝子のはたらきの一面を表していますが、遺伝子はきちんと決まった「設計図」というよりもっと柔軟なものです。経験や栄養その他の環境の作用を受けて、遺伝子のはたらきは変わります。私たち脳の発生発達の研究者は、遺伝子同士の、そして遺伝子と環境の相互作用を理解することにより、心のはたらきをもっとよく理解したいと考えています。

[胎齢12日目のラット胎児]

胎齢12日目のラット胎児(ヒトの発生第5週に相当)。すでに中枢神経系の原基である神経管は、終脳(将来の大脳皮質と基底核)、間脳(将来の視床)、中脳、菱脳(将来の小脳および延髄)、脊髄という領域に分かれており、多数の神経前駆細胞と分化したニューロンから構成されている。

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