ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明 CREST 「脳と学習」領域 大隅プロジェクト

第28回 日本神経科学大会

2005年7月28日に第28回日本神経科学大会においてメンバーの吉川武男博士がシンポジウム「遺伝子多型から脳機能を探る」を開催しました。

趣旨:
疾患だけではなく、人格特性や認知機能その他の脳の高次表現型に関しては、環境だけでなく遺伝子に規定される部分が大きく、従って遺伝子多型は表現型の個人差に貢献すると考えられる。小島正己ら(産業技術総合研究所)は、脳由来神経栄養因子(BDNF)について活性型BDNFの産生を阻害するSNP(一塩基多型)について報告した。変異型BDNFは神経細胞死の促進、前脳基底野コリナージック神経細胞のデンドライトの萎縮、海馬神経細胞のスパインの減少など、正常なBDNFとは全く逆の生理作用を発揮することを示し、BDNFのSNPが神経機能に「陰と陽」を生み出す可能性を提唱した。笠井清登ら(東京大学)は、BDNFの遺伝子多型が脳構造に与える影響を健常人で検討し、多型によって特定の脳部位の体積が異なることを見いだした。橋本亮太ら(神経研究所)も、機能的SNPであるBDNF遺伝子のVal/Met多型およびCOMT遺伝子のVal/Met多型を取り上げ、認知機能との関連を日本人で初めて検討したが、過去に白人で報告されたような関連は認めず人種差の存在を示唆した。糸川昌成ら(東京都精神医学総合研究所)は、ドーパミンとグルタミン酸受容体遺伝子解析結果を報告し、前者の多型は受容体機能を高める働きを持ち、後者の多型は受容体の数を減らすことを示し、統合失調症の病理と関連づけた。

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